
会場のきのこ園「あすわの」 短木栽培用の原木切断作業
種菌とおが屑の混ぜ合わせ作業 原木切断面におが屑種菌を接種

おが屑種菌をストレッチフィルムで固定 反対側の断面にも同様に接種
サンドイッチ栽培原木に種名を記入 シイタケ栽培用の原木に穴あけ作業

植菌棒によるシイタケ菌の接種作業 接種した箇所にスチロール製の栓をする
作業の様子ー1 作業の様子ー2

完成したシイタケ原木 サンドイッチ栽培原木

福島会長による発生までの管理方法の説明
今年度の栽培勉強会は、3月16日に予定されておりましたが、天候不順で4月6日に順延されまた。当日も午後から崩れる予報が出ておりましたが、雨に降られることはありませんでした。寒さも和らいで来ましたので風は強かったけれど、爽やかな気分で作業が出来ました。
今年度も短木栽培を先に行い、午後から椎茸のオガ菌接種を行いました。原木栽培の菌種と樹種、接種本数は、表1の通りです。
原木の種類
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菌種
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樹種
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接種本数
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短木
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シロヒラタケ
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ムクノキ
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20
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短木
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ヒラタケ(寒茸)
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ムクノキ
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9
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短木
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ナメコ
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サクラ
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5
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短木
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ヌメリスギタケ
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サクラ
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5
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短木
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シロエノキタケ
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ムクノキ
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4
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短木
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アラゲキクラゲ
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ムクノキ
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3
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長木
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シイタケ
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コナラ
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22
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7種類
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3種類
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68本
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表1
今年度も種菌作りは、福島が担当し2月初めの頃に接種して、培養室で育てた手作り種菌です。 原木調達は橋本さんに集めて戴きました。原木は重いので、切り出すのも運搬するのも大変な作業です。改めて感謝申し上げます。短木栽培に塗るおが屑種菌は、本数が少ない物については、種菌を直接塗りますが、本数が多いシロヒラタケやヒラタケ等は、増量のおが屑栄養培地を作ります。今回も、広葉樹のおが屑30ℓに7.5ℓの米ぬかを混ぜて加水し、栄養率20%位で含水率70%のおが屑培地を作り、桂木産業の3.3ℓNKポットに詰めてオトクレーブに掛けました。121℃60分滅菌です。3.3ℓ10本は一度に滅菌できないので、残りは、70ℓ寸胴釜に入れて4時間常圧滅菌しました。これほど苦労して増量剤を作らなくてもよいのですが、培養途中で汚染をしてしまうのが気になって手の込んだ作業をしています。増量種菌は3.3ℓ栄養培地2本(6.6ℓ)に850ml種菌培地を3本(2.5ℓ)入れて作りました。初めての方も接種作業にもすぐ慣れて、短時間で短木の両面におが屑種菌を塗っていました。昼食の後コナラの原木にドリルで穴をあけ、オガ屑種菌を接種棒で押し込んでいました。この作業もすぐ慣れて短時間に終了しました。
その後皆さんに集まって戴き、栽培管理について説明を致しました。本日接種されたキノコ種菌は、快適な環境を維持してあげれば、徐々に木質成分に菌糸を伸長させてコロニーを拡大させてゆきます。外気温の上昇と共に菌糸の成長も盛んに成りますが、エサを求めて多くのカビやバクテリアなども侵入してきます。直射日光にさらされる様な環境では、キノコの菌糸は、短時間に死滅してしまいますし、高温の環境で風通しが悪い時には、蒸れてしまい菌糸が弱ってしまいます。こんな状態が続くとトリコデルマの侵入が始まり壊滅してしまいます。仮伏せが大変重要である事。温度が高くなってきた時には、蒸らしてはいけない事。短木栽培の本伏せは、半分以上土に埋める事。等に付いてお話ししました。 最後に皆さんに本日栽培した原木を配布してお持ち帰り戴きました。
過去の栽培記録を読み返すとヤナギマツタケやオオヒラタケ、トキイロヒラタケ等の栽培記録が有りますが、キノコが出なかったと言う事も有りましたので、無難なキノコの種類になってしまいます。滅菌したおが屑培地に目的のキノコ種菌を接種し、完熟させた物をお渡しする方法でしたら多くの腐生菌きのこが栽培できますが、作る側の負担が大きくなり実現していません。会報に載せる写真を見ると、これ程老いた私自身の画像を見て、キノコの栽培も何時まで続けられるか判りません。
思い返せば、28歳で大宮北高校の生物の教員としてスタートしましたが、当時の自然教育のカリキュラムは、実験・実習が重んじられ、その中で、キノコの栽培がやってみたいと言う生徒の希望が有り、何もわからず取り組んでみたと言う事が有りました。大貫菌蕈という種菌メーカーで販売されていた教材用キノコキット(でるでるセット)という商品が有ったので、椎茸とタモギタケを購入してカタログ通りの方法で培養し、花壇の土に培地を埋め込み、寒冷紗で直射を遮り、時々水をあげて、観察していたところ、梅雨のころ(黄色いキノコが出ています‼)という生徒の報告が有り、初めて見た黄色いキノコに感動しました。秋には、シイタケもできたので成長記録を取ったのを今でも覚えています。林の生態調査を実施していた別の班の生徒が、梅雨の頃、大きな黒いキノコや赤いキノコをバケツにいっぱい持ってきて名前を知りたいと言う事で、当時の生物研究会会長のト沢先生にお尋ねしてキノコの名前を教わり答えたのが、私のキノコ事始めです。50年に渡りキノコを学んできた原点は、驚きや感動であったと思います。
今年度の栽培勉強会も、皆様のご協力により事故や怪我もなく無事に終了できました。あすわのを運営なされている橋本敬一様に感謝申し上げて報告致します。
文責 福 島 隆 一
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